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東京高等裁判所 昭和34年(く)48号 決定

少年 K(昭一五・一二・七生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は、原決定には重大な事実の誤認があり、且つその処分は著しく不当であるというに在る。

よつて少年に対する保護事件記録及び少年調査記録を調査すると、原決定の認定した罪となるべき事実は優にこれを認めることができるのであつて、原決定には所論のような重大な事実の誤認があるとは認められない。そして少年は中学校時代までは多少女性的なところはあつたが温和で人と争うようなこともなく独立心は強い方で特に取り上げるほどの問題はなかつた。中学卒業後工業高校に入学したが、不得意な学科があつたりして神経質となり欠席が多くなり結局二年のとき中退し、二、三の会社に職工や雑役夫として雇われたがそれも長続きはしなかつた昭和三三年四月頃心臓病のため仕事を休んでいるうち友人に誘われ浅草や上野の盛り場等でゲイボーイや男娼などをして収入を得ていたが、その方の収入も段々少くなつたので本件非行を犯すに至つたものであり、いわゆる板の間稼ぎと称する窃盗は本件の外二、三〇件にも及んでいて常習性を帯びるに至つたものと思料される。なお少年は性格としては自閉的傾向が強く自己中心的、自己顕示的で利他的感情薄く、過敏で剌戟に対する感受性が強い反面無感覚なところもあり、いわゆる分裂性々格特徴を顕著に示しており、精神障害としては無力性(疾病に対する不安)が顕著で、強迫神経症的傾向が認められ、受動的同性愛、性欲倒錯の傾向を有する精神病質乃至神経症の障害を有するものと認められる。

以上少年の資質、性格、生活態度並びに本件非行の態様を総合すると、少年を在宅のまま健全な保護育成をはかることは極めて困難であつて、施設に収容して専門家による性格の矯正並びに調整を行うことが最も妥当な措置と思料されるから少年を医療少年院に送致する旨の処分をした原決定は相当であつて、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項少年審判規則第五〇条に則り主文のとおり決定する。

(裁判長判事 坂間孝司 判事 渡辺辰吉 判事 関重夫)

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